実は現在「五十音図」と呼ばれているものは、元々アワウタのような48音からなる音の体系でした。その後、時代の流れの中で変化が起き、結果的に「五十音」と呼ばれるようになりました。その主な理由を整理します。
目次
① 古代の「48音」と現代の「50音」
本来、日本語の音体系(特に縄文からの伝承である『アワウタ』)は、「ア」から「ワ」までの48音でした。
具体的には、アワウタの48音には、現在使われない仮名である
- 「ゐ (yi)」
- 「ゑ (ye)」
などが含まれ、逆に現代仮名でよく使われる「ん (N)」は含まれていませんでした。
その後、日本語が時代を経て発展していく中で、発音しやすさや表現の多様化に伴い、音体系に変化が生じます。
- 「ん (N)」が新たに追加され、重要な役割を果たすようになる。
- 音の整理を行った結果、48音を基盤に「ん」を加えた49音となり、さらに整理・配列の美しさから「50音」と呼ばれるようになる。
実際には使われない空欄や重複音を含む表現上の都合から、語呂がよくキリが良い数字「五十(50)」を使ったのが定着したのです。
② なぜ「五十音」と言うのか?
「五十音」という言葉は、『五音(母音:あいうえお)』×『十段(あ行〜わ行)』という「縦横の整理方法」に由来します。
あ段 | い段 | う段 | え段 | お段 | |
---|---|---|---|---|---|
あ行 | あ | い | う | え | お |
か行 | か | き | く | け | こ |
さ行 | さ | し | す | せ | そ |
た行 | た | ち | つ | て | と |
な行 | な | に | ぬ | ね | の |
は行 | は | ひ | ふ | へ | ほ |
ま行 | ま | み | む | め | も |
や行 | や | (い) | ゆ | (え) | よ |
ら行 | ら | り | る | れ | ろ |
わ行 | わ | (ゐ) | (ん) | (ゑ) | を |
※( )は現代仮名遣いで使用されない音。
実際に使われる音は50音に満たない(正確には48音+「ん」)ですが、配置の整理が10段×5母音=50音でまとまりが良く、便宜的に「五十音」と呼ばれるようになったのです。
つまり、「五十音」はあくまで『整理上の名称』であり、実際に使われている基本音が必ずしも50個あるという意味ではないのです。
③ 歴史的変遷
日本語の基本音の整理法は、実際に古くから存在した『アワウタ』のような48音(母音と子音の調和)を元にしています。しかし、江戸時代後期以降に寺子屋などで広く用いられ、子どもが仮名を学習しやすいように作成された『五十音図』が普及した結果、その呼称が一般化しました。
- 古代日本(縄文~古神道的世界観):アワウタ(48音)
- 中世〜近世(平安・鎌倉・江戸):いろは歌(47音)や仮名遣い
- 近世後期(江戸中期以降〜明治以降):寺子屋教育で「五十音図」が普及(48音+「ん」+整理上の空白→50音)
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結論(まとめ)
- もともとの日本語の基本音は「アワウタ」の48音。
- 実際には48音+「ん」=49音だが、整理上の美しさ(5母音×10段の表)が採用され、呼び方として「五十音」という言葉が定着した。
- 「五十音」は『音の数』というよりも、『整理・教育上の便宜』として広まった名称である。
現代では便宜的に「五十音」と呼ばれていますが、その起源を遡ると縄文から伝わるアワウタ48音がその本質であることが分かります。