『黄色と青の龍』
僕はずっと「足りないもの」を探して生きてきた。
幼い頃に父を亡くし、友人たちの中で自分だけが何か欠けているような感覚に苛まれていた。それは成長してからも消えず、何をしても「これでいい」という確信が持てない。いつも自分には何かが足りない気がして、その欠けた部分を埋めるために動いてきた。
そんな僕にとって、「聖なるパワーを得る」という目的は、自分の人生を完成させる最後のピースだった。
けれど、どこかで気づいていたのかもしれない。本当に足りないものは、外の世界ではなく、自分の中に隠されているのではないか――と。
昨日は、そんな迷いを抱えたまま、3年ぶりに齊藤帆乃花さんのサイキックアロマリーディングを受けてきた。
あれは2009年、空海さんのお導きと感じた不思議な縁で四国の香川に来て、2022年には0円遍路を結願した。その旅は人生をリセットするような大きな転機だったけれど、お遍路に出る前に受けたのが、ほのかさんのセッションだった。
あれから3年――。再びほのかさんの元を訪れるのは、どこか運命的な気がした。
「あ、そうだ!」
急に胸がドキッとした。
そういえば、ほのかさんには「お不動さんモード」があるのだった。普段は温厚で優しい慈愛の神のような人なのに、セッションが始まると急にバリバリに厳しくなる。そんな彼女の姿を思い出し、僕は少し緊張した。
ドキドキ。
セッションがはじまり、今回のセッションの目的を伝えた。
僕が聞きたかったことは、アガスティアの葉を開いた時に言われた「聖なるパワー」が何なのか、そのパワーを高める方法。
あと、もう一つもアガスティアの葉で、「幼少期に父を亡くし、父がいないことで、父性がない、本来のリーダーシップを失っている」と言われて、それが引っかかっていたので、父性の高め方と、リーダーシップの高め方を聞いた。
寿司屋で大将にお任せで握ってもらうように、12本のアロマからほのかさんが選んだアロマを一つずつ目の前に出される。
そのアロマを香って、好きな香り〜苦手な香りの順に並べていく。
鬼が出るか蛇が出るか。
ここからがサイキックアロマリーディングの本番だ。
ほのかさんが一つ一つ言葉を紡ぐように、チャネリングで感じたことを伝えてくれる。
「お腹にいる黄色の龍は、エネルギーそのもの。陽気で、ただ前に進むことを喜びとしている。喉元にいる青の龍は、その逆で、すべてを静かに見つめている存在。この二つが、あっきーを守っているんだよ」と。
黄色の龍は僕の子どものような無邪気さ、そして青の龍は、他者の目を気にしながら自分を制御してきた僕自身だ。二つの龍は一見対立しているようで、実は互いを補い合う存在だった。
わかりやすく言うなら、活動的になる躁(そう)状態と、気分が落ち込むうつ状態を繰り返すみたいな感じ。
数字にすると、普通の人は 5(中庸)くらいで、陽気と陰気の振り幅があるんだけど、僕は10(めっちゃ陽気)とー 1(めっちゃ陰気)くらい振り幅が大きいらしい。
だから、統合とかじゃなく、今のままで、「僕ってそうなんだ」って気付いてあげることが大事なんだと。
そしてここから。
僕が思っていたことと180度反対のことを言われることになる。
なんと、僕が求めていた「聖なるパワー」というのは、何か特別なものを求めることではなく、この2つの黄色と青色の龍の力を活用していくことなんだと。
「え、それって…詩じゃん!」
僕の中から言葉が響いてきた。
小学生の時11歳の頃に詩を書く授業があって、それから35年、今も詩を書き続けている。
あの音とリズムが降りてきて、その音に言葉をあてはめる感じと、言葉の韻を踏む感じがまさに、2つの黄色と青色の龍が一つになることなんだと。
「え〜、じゃあ聖なるパワーって元々あったのに、全然違うものを求めようとしてたってこと…」
「はぁ〜〜〜」
自分の大きな思い違いに、後悔と安堵の溜め息が出た。
そして、ほのかさんの言葉は続く。
「あと、とっても言い難い、何ていったらいいのか言葉を探してるんだけど…、あっきーに足りないのは父性じゃなく母性だよ」と。
「え、父性じゃなくて、母性…?」
一瞬ほのかさんが何を言っているのか、理解が追いつかなかった。
ほのかさんは言葉を続ける。
「あっきーは幼少期にお父さんがいなかったから、家の中で知らず知らずの内に父親替わりをやってたんだと思う。
それに自分の意思で決めたことで立つ、独立する縦の力っていうのは父性で、あっきーはもうそれやってるの。今も自分のやりたいことで独立して、父性はめっちゃ強いのよ。
でも、母性がね…。家庭を築いて、子育てして、少しは幅が広がったけど、縦の強さ(父性)に比べるとまだまだなのよ」
「縦と横の強さ…」
縦と横に両手を広げ説明してくれるほのかさんが、十字架を描くマリア様に見えてきた。
「あっきーは縦がこれくらい、誰が何を言っても自分の意思を通すくらいすごく強いの。
今回の別居のことだってそう。良い悪いは置いといて、好きな人ができたからってそれをパートナーに伝えて家を出るって、すごい父性なのよ。
それに比べて横の力(母性)は、これっくらい、まだまだなのよ。
だから、誰かがあっきーの懐に入ろうとすると、バーンて跳ね返しちゃうの。
いきなりよ、バーンって。
でもそれはとっても深いタマシイの傷があるからなの。その傷があるから、今世お父さんの自殺というのも体験しているかも知れないし、突然人がバーンと離れる別れを経験していると思う。
でもそれって、あっきーの中にあるからなんだよ。あっきー中にあることが現象化しているだけなの。
だからまず、それだけ深く傷ついている自分を認識してあげることが大切」
ほのかさんの表情がどんどん優しく、慈愛に満ちていった。
僕の中で言葉にならない何かが、言葉にならないけど、モゾモゾ蠢いているのを感じた。
すると突然、幼い頃の記憶がフラッシュバックする。母が僕たち兄妹を育てるために朝から晩まで一生懸命仕事で頑張っていた姿だ。
僕は「弱音を言ってはいけない」と自分に言い聞かせ、母や他の大人にも甘えられず、甘え方もわからず、ただ母に心配をかけないようにと必死だった。
「ずっと、自分の弱さを、弱音を吐くことを拒絶していたんだ…」
そう心の声が聞こえてきた。
ほのかさんは言葉を続ける。
「縦の力(父性)がこれだけ強いってことは、横の力(母性)も同じくらい強いんだから。
あっきーは少しずつ懐を大きくしていくといいね。人を受け入れてあげるようにするの。
手のかかる子ほど可愛いって言うじゃない、まさにそれよ!」
ほのかさんにそう言われて、ふと、今好きな人のことが頭に浮かんだ。
「あ、だから、今好きな人も出会ってるかも。 放っておいたら自分を犠牲にしてボロボロになるまで頑張っちゃうから、放っておけなくて、誰かを守ってあげたいって初めて思った人なんだ。
その人の声が特に惹かれて、一緒に言霊唱えたら、今まで何千人と言霊唱えてきたけど、感じたことのない神様のような透明な声が内側から響いてくるのを感じたんだ。
それがきっかけでその人のこと好きになったんだと思う」
「うん。それはきっとタマシイのステージが上がって、神様がご褒美をくれたんだと思うよ。
そこからどうなるかは、これからのあっきー次第だね」
僕の中の母性を広げるのと、深いタマシイの傷を癒すことは、イコールなんだと感じた。
ほのかさんは言葉を続ける。
「あっきー、リーダーシップのこと言ってたじゃない。
それもね、あっきーのリーダーシップっていうのは母性なの。
みんなをあっきーの懐に入れて育んでいくことが、あっきーのリーダーシップなの。
みんな俺についてこい!っていうのは父性で、ワンマンっていうの?それはもう十分にあるわけ。
だからそうじゃなく、あっきーの中にある母性を、横の力を広げて、みんなを包んであげる、支えてあげるっていうのが、あっきーのリーダーシップなのよ」
「………」
またしても僕は言葉を失った。
何から何まで見当違いで、いったい僕は何を求めていたのだろうか。
全然違う道を選んで歩もうとしていた自分に落胆し、ゾッとするとともに、自分の過ちに気づけたことに安堵の念が湧き上がってきた。
ほのかさんは言葉を続ける。
「人生が大きく変わろうとするときって、同じくらい戻りたいって気持ちが大きく働くものなの。
変わりたいけど変わりたくない、そんな感じ。
だから今回あっきーがこのタイミングでセッション受けてくれたことは、すごくいい判断で、まだ動き出す前だからね。すごくよかったと思う。
龍が2つもついてる人なんて珍しいわよ。ほんと見せてあげたい。
黄色い龍がお腹の所でゴロゴロしてて、青い龍が頭の後ろからビョーンて出てるの。
龍が2体ついてるってことは、それだけのお役目があるってことだからね。
これからあっきーの母性、横の力が広がることで元々もっている父性、縦の力とあわさってすごいことになるから!
それができるとリーダーシップはもちろん、宇宙に言霊を響かせられる。
万物に言霊を響かせるの。
ぜんぶぜんぶ宇宙に言霊を聞かせられるの。
そしたら言霊でUFOも降ろせるようになるかもね(笑)」
「言霊でUFO降ろすって…、さすがほのかさん!そんな考え初めてだよ(笑)」
最後は、ほのかさんのぶっ飛びトークに心も弾んでセッション終了。
いや〜、さすがサイキックアロマリーディング。
思考の枠も外れ、過去世から現在の状況や未来まで読み解き、スピリチュアルな視点からのメッセージと、三次元で現実的に実践できるアドバイスももらえる。
こんなセッションできる人、ほのかさんしかいないよね。
占い師は自分を占えないって言うじゃない。
ほんとそうで、僕も日々の悩みならフトマニカードに聞いて言霊ヒーリングしてある程度自分で解決できるけど、タマシイとか人生の深い部分になると自分ではどうしようもないんだな…。
僕の母性が狭い問題も、今の好きな人から「あっきーさんて急にバンて人を切ったり、遠ざける時あるよね、その時すごく血色悪い顔してるよ」と言われたことがある。
『タマシイ』って言葉、僕もブログで書いたり、クライアントさんに説明で使うけど、深すぎて今の僕が感じる『タマシイ』というものしかわからない。
今回のセッションでまた一つタマシイの勉強になったし、深く傷ついている自分がいると知ることができたことが良かった。
知ることはできることにつながって、
できることからコツコツと人生を変えていくことができる。
誰に何て聞いたらいいのかわからないタマシイの深い問は、ほのかさん。
すごい助かる、すごいお役目。
ほのかさんから、最後に言霊のアドバイスを頂いた。
「お遍路に出る3年前は、土地に言霊を響かせるって伝えたと思うけど、これからは人に言霊を響かせるんだよ。
聞いた人がどう感じているか、それを感じるの」
は〜、またしてもありがたいお言葉。
自分と自分の中の言霊の響き、倍音ばかり気にしてて、聞いてる人がどう思うかなんて考えたことがなかったかも。
それが横の力で、母性か…。
「あ、そうだ!これプレゼントであげる!
名前のないアロマなの。あっきーが名前つけてね。
それとメッセージがあるの、44枚の中から一枚選んで」
裏側に向けられ、扇形に差し出されたカードの束の中から一枚選ぶと、何とも言えない感動かジーンと湧き上がってきた。
「あなたは神様から
そして親やご先祖さまから
愛されてここにいる尊い存在です」
10代前の先祖が1024人、30代前で10億人と言われていて、私というたった一つの生命がここに存在することは、無数の奇跡と奇跡の掛け合わせの結果なのだ。
私という唯一無二の存在。
唯一無二でありながら、天地に生かされているという事実。
海で朝焼けや夕陽を眺めるとき、スーっと光は自分に向けて進んでくる。誰がみても、その人を照らしている。つまり太陽はこの世界に存在するすべての生命を平等に一つ一つ照らしているのだ。
まさに天照。
『天照大神』という御神名には、太陽のもつそのような偉大な力も讃えているのだろう。
きっと誰もが神様から愛され、そして親やご先祖さまから愛されてここにいる唯一無二の尊い存在なのだ。
目の奥がじわりと熱くなってきた。
父性も、聖なるパワーもここにあった。
『ない』と思っていたのは僕の勝手な思い込みだった…。
今回ほのかさんのセッションを受けて、僕は大きな間違いに気づくことができた。
それは上りと下りを間違えるような大きな間違いで、あのまま進んでいたらと思うと言葉を失う。
神のお導きか…。
困った時にいつも導いてくれる存在がいて、亡くなった父なのか守護霊なのか、神なのか何なのか。
それが知りたくて僕は、フトマニを研究しているのかもしれない。
「ほのちゃん今日はほんとうにありがとう、また一緒にリトリートしようね」
セッションが終わり、お互いいつもの友人モードの会話に戻った。またの再会を約束し、僕はほのかさんのサロンを後にした。
その帰り、僕は内側から溢れてくる音と言葉を紡ぎ始めた。
それは黄色と青の龍が一つになる詩だった…。
光と影はいつも一つ
見えるものと見えないもの
それは身体と心のよう
見えないものが見えるものを
見えるものが見えないものを
ときに同調し、ときに相反し
互いが違いを
一つにしようとするほどに
苦しくなって反発するさ
黄色と青は混ざらない
緑はもう違う色
互いが互いの違いを…
光と影はいつも一つ
見えるものと見えないもの
その役割が違うだけ
一つにしなくていいんだよ
一つになっていくものが
愛で宇宙で僕なんだ
一つにしなくていいんだよ
もう一つになってるよ
大きな宇宙の僕らは家族
もう一つになってるさーーー
詩を書き終えたとき、胸の奥にジーンと響く、確かな「何か」を感じた。
これが、ずっと探し求めていた聖なるパワーで、僕の中にずっとあったんだ…。
セッションの最後に、ほのかさんからいわれた言葉が心に響く。
「これからは、言霊を人に響かせるんだよ」
僕は胸の奥が熱くなるのを感じながら、そっとアロマの瓶を開いた。
その香りは、黄色と青の龍の息吹のように、僕の身体と心を包み込んでいった。
Fin
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齊籐 帆乃花プロフィール

20代前半、突然重度のアトピー性皮膚炎発症をきっかけにアロマセラピーに出会う。
その後メディカルアロマセラピスト・アロマカウンセラー・リフレクソロジスト・整体師などの学びを深め独立。27歳の時に出会った精油に衝撃を受け、セルフトリートメントを開始、心身のみならず人生が大きく変わる。
2013年、クライアントの使命を伝える日本で唯一の「サイキックアロマリーディング」を確立。口コミで日本各地、海外でも常に満員御礼となる。セミナーやリトリートツアーなどの依頼も絶えない。
前回のほのかさんのセッションを受けた時の記事はこちら→

作者プロフィール

